「・・・ん・・。」
髪を撫でられる感覚に、夢の中を彷徨っていた意識が
現実へと引き戻される。
寝ぼけ眼で隣を見ると、自分のシャツを羽織ったアリスが、可愛らしく微笑んでいた。
窓から差し込む朝日のせいか、シャツの白さとアリスの白さが際立って見えて
とても神聖な光景を見ているような感覚に囚われる。
「どうしたの?」
不思議そうに尋ねる様子すら現実味がなくて、思わず手を伸ばし確かめてしまう。
「ホレイショ?」
頬に添えた手の上にアリスの手が重なって、温もりが伝わって来る。
「・・・kiss me・・。」
それをもっと感じたくてそう呟くと、アリスは少し驚いたように
でも嬉しそうに、はにかみながら笑う。
「目、閉じて。」
言われた通りにすれば、触れるだけのキスが降ってきた。
けれど軽く羽のようなそれでは物足りなくて
「もっとだ。もっと深く。」
そうせがむと、その求めにアリスは応じようとする。
その姿が愛しくて
繰り返していく度に深くなっていくそれに余裕がなくなり
いつの間にか主導権は移っていた。
「・・・ん、・・はぁッ・・・」
十分堪能し、開放した頃には
アリスは肩で息をし、ぐったりしていた。
「すまない。大丈夫か?」
「・・うん。・・・ホレイショは大丈夫?何だかいつもと様子が違ったけど・・・。」
心配そうに聞いてくるアリスに、しばらく間をあけ口を開く。
「さっきアリスが天使のように見えて・・・どこかへ行ってしまいんじゃないかと思ったら不安で、
抑えが利かなくなった・・。すまない。」
自分らしくない言動に、自嘲的な笑みが浮かぶ。
「嬉しかったよ。」
「?」
にっこりと笑うアリスの意図が分からず、首を傾げてしまう。
「いつも私からばっかりで、ホレイショから私のこと求めてくれることってあんまりないでしょ?
私がホレイショのことが大好きなように、ホレイショもそうなんだって分かってすごく嬉しかったの。
だから謝らないで。」
アリスはそういうと本当に嬉しそうに笑って、抱きついてきた。
「・・・・・。」
嬉しいのはこっちの方で
アリスがそう思ってくれていたなんて思わなくて
気持ちが溢れてきて、ただ抱きしめ返すことしか出来ない。
「ずっとここにいるよ。もうホレイショなしじゃ生きていけないんだよ、私。
だからホレイショが嫌だって言っても離れないんだから。・・・覚悟してよ?」
悪戯にいうアリスに、返事の代わりにキスを送る。
嫌いになることはあり得ないさ。
俺だって君がいなければ生きていけないんだ。
From.Endroit de trouvaille