black kiss

ヒュー・・・ドォオンッ


力強い響きとは裏腹に
空に咲く花は儚く、一瞬で灯火を散らす。

綺麗で、けれど切なさを覚えるその光景。


「ホレイショ?」

その切なさを埋めようと
無意識に抱き締めている腕に力を込めてしまったらしく
気付くとアリスが、不思議そうに俺を見上げていた。


「あぁ、すまない。」
力を緩めるとアリスは
「うぅん、平気。こうしてた方が落ち着くし。」
とにっこりと微笑むと、自分から抱き付いてきた。

触れた部分から伝わる温もりと鼓動に、アリスの存在を感じる。

それだけでもう、心はいっぱいになり
ただただアリスを愛しく思う気持ちが膨らむ。


「アリス。」

甘く、愛しさを込めて名前を呼ぶと
アリスは嬉しそうに俺の方へと向く。

「なぁに、ホレイ・・ん、ぅ・・・。」


互いの顔が薄っすらと見えるか見えないかの闇の中。
答えようと開いたアリスの唇に、自分のソレを重ねてみれば
視覚がない分、いつもより確かに感じる愛しい人の感触。

その感覚に夢中になり、互いを刻み込むかのように
じっくりと、深く、舌を絡ませ合う。


時折上がる花火に照らされたアリスの顔を見ると目が合って
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに目を細める仕草に
欲は増すばかり。


「きゃっ。・・ホレイショ!?」

その場で押し倒すと、アリスは驚いたように見上げてきて

「君が欲しい。」

耳元で囁けば、ソレに反応するようにアリスの身体はビクリと震えて
その様子が可愛くて、口元が緩む。


「ホレイショッ・・・やぁっ・・。」

浴衣から覗く白い肌に吸い寄せられるように口付ける。


首筋、鎖骨、胸元、順々に痕を残していくと
アリスがシャツを握り締めていることに気付き、顔を上げる。


「どうした?」

「・・ここじゃ、嫌なの・・・。」


頬を染め、濡れた瞳でこちらを見つめるアリス。

浴衣を着ているせいか、いつもよりも色っぽい様子に

揺らぎそうになるが、それを何とか押さえる。


「どうしてもか?」
コクリと頷くアリスに「そうか。」と上から退く。

自分の欲のままに行動するのは簡単だが
アリスを傷つけるようなことはしたくない。


自分を落ち着かせようとアリスと距離を置こうとするが
不意に手を引かれ、後ろにひっくり返る。

起き上がろうとすればアリスに制されて。


「・・アリス?」


首元に顔を埋めるアリスの意図が解らず
名前を呼ぶとアリスは呟いた。



「ここじゃ嫌だけど・・・ベットなら、いい・・・・。」

小さな声で、けれどしっかりと聞こえた言葉に
笑みを浮かべ、アリスを横抱きする。



二人の行方を見守っているのは

フィナーレを飾る光露だけだった。





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