!!いい案が浮かんだよ!!」

 毎日私のところに来ては、新しい商品のアイデアを話し出すこのおかっぱ頭。
 このヘンテコな人が、かの有名なウィリー・ウォンカ工場長。

 どうやら私はこの人に気に入られてるらしい。
 ・・・工場に住むなんて言わなきゃよかった。

 でも、毎日来てくれるウォンカさんを待ってる私もいたりして。





English Word Story - Favor -






「なんですかー?」

 このとき私は美味しそうな香りが漂うチョコレートの川を見下ろしていた。
 だって、ふんわりしてて見事なまでに美味しそうなチョコ。
 滝で混ぜようなんて、絶対ウォンカさん以外に考える人がいないよね。
 でも一番いい方法なのかも?
 さすがウォンカさん!チョコレートに関してはエキスパートよね。

!!こんなところにいたのかい?」
「はいはーい、いますよー」
 ウォンカさんの声色は、私を見つけたことによってますます高くなる。
 きっととんでもないことを思いついたに決まってるわ。



 ・・・え?私の扱いが粗末だって?

 そんなことないよ!だっていちいち全力で相手にしてたらバテるのはこっちだし。
 チャーリーなんて手馴れたものよね。
 私はそんな少年を尊敬してるたりする。



 私が座ってた隣にウォンカさんが座り、キラキラした目が近くに寄る。
 近いと解るけど、彼の瞳は少し紫がかってて綺麗。
 羨ましいと思ってしまう。

、これは凄くいいアイデアだよ!!」
 ウォンカさんの無邪気な顔を見てると、微笑ましくなっちゃう。
 そして、ついつい私も訊いてしまうのよね。


「どんなお菓子ですか?」
「空を飛ぶガムさ!!」

 空を飛ぶガム??
 そして私は毎日同じ言葉を紡ぐ。
「どんなのか言わないでくださいね!当てて見せますよー」





 毎日、毎日。

 この幼い大人が考えるお菓子を言い当てるのが、私の日課みたい。





 空飛ぶガム・・・だから、噛んだら空が飛べるほど膨らむとか?
 ほら、バイオレット・ボーレガードのようにプクーッと。
 ・・・でも、体が膨らんだらご両親の目が点になるわよね。
 人体の不思議として加えられちゃう。
 きっとアインシュタインも思わず舌を引っ込めちゃうよ。


「・・・わかんない・・・」


 そう、毎日言うのは降参の言葉。
 だってウォンカさんの考えることって突飛過ぎて思いつかないし。
 いつか当ててみたいのに・・・当てることが出来ないでいるの。

 私の降参を聞いたウォンカさんは、ふふんと自慢気な笑みを浮かべながらカラフルなステッキを振った。



「ね、空飛ぶガムってどんなのですか?」
 なんだかんだ言って、私も好奇心のかたまり。
 今日は何を考えたんだろう、気になっちゃう。
 するとウォンカさんはステッキを上に向け、満足げな笑顔を私に向けてくれた。



「人間って空を飛びたがるだろう?そういう時、“空飛ぶガム”を噛んでもらうのさ!」
「へぇ〜!それでそれで?」
「それでフーセンを作ってもらうのさ!」
「風船?」
「そう、プクーッと!!そしたらとんでもない大きさに膨らむ!」
「大きく膨らむのは、砂糖風船で実行済みじゃない?」
「途中まで砂糖風船の要領さ。でも此処から凄い!膨らますと、そのガムが浮遊するんだよ!」
「浮遊?あ!もしかしてガムと一緒に空を飛ぶの?」
「そのとおり!!たった1ドル90セントで空への浮遊旅行ってわけだ!!夢のようだろう?」



 聞いてる限りでは夢物語だけど、この工場長ならやってのけるかもしれない。

 でも、と私は訊いてみた。



「地上に降りるときはどうすればいいの?」
「ガムを割れば急降下!真っ逆さまさ!」
「えぇえっ!?それはダメですって!!」
 思わず立ち上がってしまった。

 だって、子供たちが一斉に浮遊したかと思ったら、地上まで真っ逆さまなんでしょ?
 それは犯罪だよ・・・ウォンカさん。



 私がよくない反応をしたのか、ウォンカさんは打って変わってシュンとしてしまった。
 ステッキもゆっくり下ろしてる・・・なんか可哀想なことを言ったみたいじゃない。
 でも正論だからそのアイデアを肯定できないでしょ?

 だから私は毎日フォローを入れてあげるの。

「あっ、でもガムを噛んでるときって意外と体力使いますよね。軽いガムっていいかも?」
「本当かいっ!?」

 ほら、また元気になる。
 本当に子供みたいだなぁ・・・可愛く思えちゃうや。



「ウォンカさんって可愛いですねー」
 そう言ってみると、ウォンカさんは 「の方が可愛い!」 と満面の笑顔で言ってくれた。

 ・・・あぁ、やっぱこの人可愛いわ。





 チョコレートのように癒す存在だった私が言うんだから、絶対よ。
 ウォンカさんこそチョコレートのような存在だわ。

 チョコレートを愛してる人なら、誰でも好きになると思う。
 だって、私もこれだけの好意を示してるんだもん!



 だからね・・・毎日、毎日、私は彼の呼ぶ声を待ってるんだよ。






author's comment...
 なんか生ぬるい感じですかね。
 ウォンカさんとちゃんを書くと、のんびりのほほんとなってしまう・・・
 彼女なりに、一番の好意を示してるんでしょうね。
 前まで一番はチャーリーだったのに、ウォンカさんに代わったみたいです。

 でもなんだか雰囲気が違うかな?

 ・・・チョコレートの川に溺れさせたい・・・ちゃん(笑)