Very Short Story - First snow of the year -

 私の足は、思わず工場の外へ向いてしまった。
 だって外にはパラパラと、白い粉雪が降ってたんだもん。
 ふと、後ろを向けば・・・ほら、この人も付いてきてる。
 この莫大な工場の持ち主、ウィリー・ウォンカさん。
 普段外に出ないくせに、こういったイベント事になるとひょっこり出てくる。


「凄いですね、ウォンカさん!!」
「本当だ!この調子だと積もるかもしれないね♪」




 徐々に白く染まる街の様子、そして寒そうに通り過ぎる街の住人。
 私たちだけが違う世界にいるかのように、上を見上げていた。

「うわぁ、綺麗・・・」

 私が両手を広げると、そこに白く冷たい雪が幾つも落ちる。
 落ちた途端透明になって、幻想的な世界を作り出すみたい。


 手のひらに落ちる雪を見てた私の頭を、ウォンカさんは叩いてくれた。
 それが軽く、積もってきた雪を落としてくれてることだってわかってた。
 ちょっと嬉しく感じちゃう・・・けど、そういえば寒いかも。


「寒くないかい?」

 おちゃらけた感じで訊かれた私は、絶妙なタイミングだったことを心の中で褒める。

「寒いですよー」

 これまたおちゃらけて返す。
 するとどういう反応したと思う?


 グイッと腕を引かれたかと思うと、あっという間に何かに包まれてしまった。

「これなら寒くないよ!」

 元気な声がすぐ近く。
 ワインレッドのコートはなんて暖かいんだろう。
 上を向けば、青白くも笑顔の表情をしたウォンカさん。
 思わず私も微笑んでしまった。

 もう一度、今度は手のひらだけ外に出す。
 ポッ、ポッと相変わらず雪は落ちては消えていた。


「・・・ウォンカさんって工場内に降ってる雪みたい」
「・・・ねぇ、それは褒めてるの?」


 あっ、訝しげな表情。
 此処は笑顔でごまかしておこうかな。


「さ、そろそろ入りますか!」