Very Short Story - A cloud -

 ・・・そういえば、雲が一つもない。
 私は上を見上げながら、街中を歩いていた。




 ノエルさんのお店を手伝った帰りのこと。
 いつもはウォンカさんの“ガラスのエレベータ”による迎えがあるんだけど、
 今日は歩いて帰りたかったから待たずに歩いてる。


 ほら、空から見るのとは少し違う景色が好き。
 晴天なのが嬉しいのか、子供たちが遊んでる。

 そういえば・・・チャーリーはあの年から工場内で働いちゃってるのよね。
 寂しくないのかなぁ・・・なんて哀愁を出してみる。


「また一緒に遊ぼうかな」


 そう思いながら通り過ぎようとすると、その子達が笑顔で手を振ってくれた。
 バイバイと手を振り返して、私は再び歩き始めた。

 今の子達は自分の影を踏んで遊んでるんだ。
 確かに雲ひとつ無かったら、太陽によってくっきり影は出来るわよね。


 ほら、また一つ発見。
 こう言った発見があるから、私は街を歩くのが好き。


 よそ見しながら歩いてると・・・もうすぐ衝撃がやってきた。


 ガンッ!

「わぅっ!!」


 ・・・ん!?
 何かにぶつかった・・・あれ?
 これウォンカさんが愛用してるガラスのエレベータじゃない?
 ほら、中に持ち主さんがいるじゃない。
 何でこんなところにいるの??


「ウォンカさんどうしてこんなとこにいるんですか?」

 開いた扉から入り、疑問をぶつけてみる。
 するとニコニコとした表情のウォンカさんはご機嫌な様子で答えてくれた。

「街の様子を見たくてね、低く飛んでたんだよ」

 ・・・なるほど、それにたまたま私がぶつかったわけだ。

「で、僕も同じ質問していいかい?」
「え?」
 あぁ、私がどうしてここにいるのかってことかな?

「帰ってるんですよ?ウォンカさんと同じで、街の様子を見ながらね。」
「本当かい?じゃあ一緒に帰ろう!」


 エレベータのドアを閉めて、グーンと空へ上がった。

「え、空へ上がるんですか?」
「そうさ!君のようにぶつかられちゃ困るからね。ハハッ」

 ハハッて・・・痛かったですよ?
 それにウォンカさんだってよくぶつかるくせにさぁ。

 なんて思ったけど、口には出さなかった。



「・・・あ、雲だ」

 ふと見上げると、薄い雲が一筋だけ動いていた。
 地上から見ると全く無いのかと思ったのに、あったのね。



「空にいても発見することがあるんですね」

 するとウォンカさんは何も言わず、微笑んだ。