I am Half-asleep
「ふわぁあ〜・・・」
休憩室のソファで仮眠を取っていた私は、ふと目を覚ました。
今凶悪な事件に追われてるって言うのに仮眠を取るとはなんてヤツだって思われちゃうかな。
でも徹夜明けで仕事してたんだもん。
ほんの10分くらい睡眠を取らないと、唯でさえ無い集中力がもっと途切れちゃう。
「良く寝たぁ・・・」
10分間だけどね。
ソファから上半身を起こし、大きく天井へ向かって両手を伸ばした。
「・・・・ん?」
何か視線を感じる。
向かいのソファを見ると、そこに座ってたのは笑顔のスピードル。
「お早う」
「おはよぉ・・・あにしてんの?」
“何してんの?” と訊きたかったんだけど、あまりにも少ない睡眠時間に頭が回らなかった。
それでもスピードルは解ってくれたみたいで、こう答えてくれた。
「休憩しに来たら寝てた、それだけ」
「明快な返事を有難う・・・」
ボーっとしながらも突っ込みを入れてみたけど、のんびり喋ってしまったから突っ込めてない。
「それにしても気持ち良さそうに寝てたなー」
「うるさい・・・」
だめだ、眠い。
徹夜をするのがダメな上に睡眠時間が10分って、流石の私でもダウンするってば。
ウトウトと船を漕いでいる私を、スピードルはクックッと笑いながら眺めてる。
それでも気付かなかったのよ。
だってウトウトしてる間に夢を見てたんだもん。まるで短編集のような感覚だった。
「・・・あだっ」
「あ、頭打った」
ゴンッと壁で頭を打って、思わず頭を抱えてしまった。
「いったぁ〜・・・」
「自業自得だな」
あははと今度は大きく笑いやがった。
キッと睨んでやると、スピードルはまだ笑いながらも続ける。
「寝ぼけるほど眠い?」
「えぇ、もう夢を見足りないほどね」
皮肉めいたことを言いたかったんだけど、なんか変なことを言ってしまった。
ほら、頭が働いてない証拠ね。
さっきぶつけちゃったし。
「もー無理・・・こんなんじゃ顕微鏡覗けないわよ」
ボフッと再びソファに倒れこむ。
「スピードル・・・一生のお願いがあるんだけど」
「何?」
「チーフに言っといて・・・ 『寝かせてくれないと二度と顕微鏡を見ない』 って」
途中の方は夢への扉を開いたためか、音量が小さくなっていった。
数分後には気持ち良さそうに眠りについてしまった。
すぅすぅと寝息まで立ててたんだから、本当に眠かったのよね。
「 “一生のお願い” ねぇ」
だるそうに呟いたスピードルは、ソファの間に置いてあるテーブルを跨り、そのまま机上に座り込んだ。
「もっと他に使い道あると思うけど」
私は反応せず仰向けのまま眠りについてる。
すやすやと無垢な寝顔をスピードルに見られてることも知らず、今頃私は夢の中。
スピードルはゆっくり近づき、そっと唇を合わせた。
「・・・うん・・・」
離れると、知ってか知らずか ―絶対知らないけど― 私は身じろいだ。
そんな私の髪を優しく撫でた彼は微笑みを浮かべて呟いた。
「 “一生のお願い” をしてくれたら、この先のこともしようか?」
私が眠ってるのをいいことに、そう言ったスピードルは微笑みを浮かべたまま休憩室を出た。
薄暗い中、何も知らない私はとても気持ち良い夢を見ていた。