Your smile is my love potion
の声に気付いて、ホレイショは足を止める。
ふと、隣のラボに目を向けた。甲高い笑い声が聴こえていた。
彼女の盛大な笑い声を効きながら、首を傾げる。
そんなに笑える仕事じゃないはずだ。何をしているんだ?
好奇心も働き、ホレイショがガラスのドアをそっと開けた。
「あー面白い!」
独特の高い声が、笑うことにより更に高く聴こえる。
何をそんなに笑っているのだろう、と訝しそうに扉を閉めた。
彼女を見ると、手に白い紙が握られている。
「」
わざと怒っているような声を出すと、の肩が大きく震えた。
ぴたっと笑い声が止まり、恐る恐る振り返っている。
「・・・チーフ」
「何を笑ってるんだ」
が安堵のため息を吐いた。
怒っているような声を出したが、ホレイショの表情は穏やかだったからだ。
特に怒ってもいない。寧ろ彼女の元気な笑い声が微笑ましく感じられた。
「ごめんなさい、煩かったですか?」
心なしか、目に涙が浮かんでいる。
笑いすぎだ、と心の中で呟いた。
「いや。それより何がそんなに可笑しいんだ?」
優しい笑みを浮かべて、の近くに寄った。
彼女は快く持っていた手紙を見せてくれる。
「実は、デルコが彼女に振られたらしいんです!」
「デルコが?」
それがそんなに可笑しいことなのだろうか、とホレイショは手紙を覗いた。
実際、デルコは女性に関して不自由していない。
そんな彼が “振られた” となると、確かに面白いことかもしれないが、そんなに笑えるかは分からない。
だが、手紙を読んだホレイショは納得が出来た。
カリーの字で、デルコが何故振られたかが書かれている。
その理由は、確かにが爆笑しそうなものだった。
「ね、面白いでしょ!」
再びくすくすと笑い始めた。
「確かに、デルコらしくないな」
ホレイショも釣られて小さく笑う。
ふと、を見た。
彼女が涙を浮かべながら笑っている姿を、暫く見る。
可笑しそうに笑っていたは、少し経ってホレイショの視線に気付いたようで、彼の方を見た。
「なんですかー?」
笑いをどうにか抑え、深呼吸をしながら訊いてきた。
いつも思っていた素直な気持ちを、彼は伝えることにした。
「の笑顔が、こんなに愛しいとは思わなかった」
呆気に取られてしまったが、優しく微笑む ―― いつも見せる柔らかい笑みだ。
「惚れちゃいました?」
「そうかもしれない」
照れたように笑った彼女を見て、彼も笑みを浮かべた。
「君の笑顔は、まるで媚薬のようだ」